当グループは、主に飛翔体(人工衛星、気球)を用いて宇宙からのX線ガンマ線を観測することにより、宇宙の高エネルギー現象を中心に観測的研究を行なっています。高エネルギー現象は、ブラックホール、中性子星(パルサー含む)、活動銀河核、銀河団、超新星および超新星残骸、ガンマ線バーストなどであり、こうした極限宇宙の環境では、加熱加速された粒子からX線ガンマ線が放射されるため、それらを観測することによって、高エネルギー宇宙現象の理解につながります。そのため、衛星からデータ解析を行なうとともに、将来の人工衛星などに搭載する観測装置の基礎実験や開発を行なっています。現在は、2008年にNASAから打ち上げられ、広島大学が開発に大きく貢献したフェルミ・ガンマ線衛星を中心に、他のX線観測衛星のデータ解析や、他波長との連携観測も行なっています。また最近では海外と協力してマイクロ衛星搭載観測装置にも取り込んでいます。
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グループメンバーの紹介
深沢泰司 教授
主にX線ガンマ線観測によって、宇宙高エネルギー現象を研究しています。特に、銀河団、活動銀河核(巨大質量ブラックホール)、恒星質量ブラックホール連星を対象とした研究を進めています。銀河団では、その進化と高エネルギー粒子加速との関係を探り、宇宙最大規模の天体の成長がどのように起きているのかをさぐっています。活動銀河核では、巨大ブラックホールの進化をさぐるために、その周辺物質をX線で探っています。また、活動銀河核からの宇宙ジェットの発生機構をさぐるためX線とガンマ線により、その放射機構を研究しています。恒星質量ブラックホール連星では、巨大質量ブラックホールとの類似点に着目して研究を進めており、巨大ブラックホールの放射機構の解明に迫っています。これまで、X線ガンマ線観測装置の開発にも関わってきており、「あすか」、「すざく」、「ひとみ」、フェルミ衛星などに搭載されました。
水野恒史 准教授
宇宙空間から地球に降り注ぐ相対論的粒子「宇宙線」を研究しています。地球に届いた物を直接観測するのではなく、X線やガンマ線を用いて加速源(ブラックホールなど)や、星間空間(星と星との間)における状態を調べることで、宇宙線がどこで生まれどのように銀河系の中を伝わっていくか、総合的に理解することを目指しています。そのため日本の「すざく」衛星や、日米欧の国際協力によるフェルミ衛星のデータを解析しています。最近は宇宙線と星間ガスの理解を深めるため、フェルミ衛星と電波・サブミリ波のデータの比較にも取り組りくむとともに、日本の次期X線衛星代替機(XARM)にも参加しています。またブラックホール連星などをX線・ガンマ線で偏光観測することで、遠くにありすぎて撮像(望遠鏡で撮影した画像など)では分解できない天体の構造や、そもそも撮像できない磁場構造を調べることも目指しています。そのため国際協力でPoGOLite/PoGO+という気球実験を行っています。加えて外国の衛星計画にも参加し、系統的なX線・ガンマ線偏光観測を実現したいと考えています。
高橋弘充 准教授
太陽の10倍以上の質量を持つ恒星は、その一生の最後に超新星爆発を起こし、中心に中性子星やブラックホールを残します。これらの天体は、人類が地球上で実現できないような高密度(~重力)・高磁場の環境下にあります。こうした天体に降着する物質が放出するX線やガンマ線で観測することで、周囲から物質がどのように降着し放出されているのか、また中性子星やブラックホールがどのような物理状態にあるのかを研究しています。より高感度な観測を実現するためX線天文衛星代替機XARMや、偏光(イメージ、スペクトル、時間変動と相補的)観測をする将来衛星の計画にも携わっています。また人工衛星用の検出器の技術を援用し、身の回りの放射線環境が調べられるガンマ線や中性子用の放射線検出器の開発も行っています。
須田祐介 助教
宇宙ではいろいろな高エネルギー現象が起きています。そうした現場からは幅広い波長帯で電磁波が放射され,メッセンジャーとして我々に壮絶な現場の様子を伝えてくれます。私は,電磁波の中でもエネルギーがとても高い,1兆電子ボルト帯域のガンマ線観測を通して高エネルギー現象,特に宇宙最大の爆発現象ガンマ線バーストの物理を探求しています。超高エネルギーガンマ線の観測は,地球大気も検出器の一部として利用してしまう大気チェレンコフ望遠鏡を用いて行います。私は,そうした望遠鏡の一つであるMAGIC国際共同研究グループや次世代地上ガンマ線天文台CTAに参加し,国際色豊かな仲間たちと日々研究に励んでいます。また,MeVガンマ線天文学の飛躍的な進展を目指した研究開発も進めています。